通夜

母がなくなって、病室でわんわんと泣いた。


兄も妹も。きっと遠くにいる姉も。



葬祭の方は連絡するとすぐに来てくれた。
たった数日しかいなかった病院の個室も、別れ際はなんだか寂しかった。
ここで母が死んだ。
ふと部屋を見渡すと、シミや汚れ、使いふるされたカーテンが視界に入る。
多分、きっと、たくさんの人がこの部屋でなくなったのだろう。
母で何人目か。
でもきっとここにはまた末期の方が入るのかもしれない。
悲しみがシミや汚れのように残ったら、この部屋は真っ黒になってしまう。


母の葬儀の話は、その日の夕方にまとまった。

母の通夜は妹の自宅で行うこととなった。

通夜といって、簡素なほんの少しの身内だけが集まるものになった。

妻も、妻のご両親も駆けつけてくれた。

娘は一度だけ会わせている。

この年じゃ、おばあちゃんの記憶は残らないだろうな。

娘が母の顔を叩く。

もう叩いても起きない母をみて、あらためて亡くなったのだと項垂れ、娘を抱き締めた。