母、死ぬまで

母が入院中は姉と兄、私で付き添っていた。

妹もいたが、臨月で幼いこども数人抱えているので、時折顔を出す程度だった。

一日目
意識はあるものの苦しそうで、なにか訴えることがあってもなかなか聞こえず。
苦しいと言うことだけはわかった。

二日目
もうこちらの問いかけにほとんど反応せず、ただ苦しそうな表情をしていた。

三日目
二日目と同様に反応はないが、苦しそうな様子がなくなった。大きな呼吸ずっとしていた。その夜に亡くなった。

三日目の夜間付き添いは私だった。姉は私同様に遠方から来ているた。娘もいる、帰らないといけないと三日目のお昼頃に帰っていった。


病棟が消灯し、寝静まった時間に母の呼吸が浅くなってきた。

看護師さんに家族を呼ぶように言われ、なすがままに連絡をいれた。

ずっと母の名前を呼んだ。手も握って、ここにいるよと何度も傍で伝えた。途中、兄も加わり、同じ言葉を二人で繰り返した。

兄が来て少しの時間が経ったとき、ずっと大きいけど、浅い呼吸をしていた母が静かになった。

ゆっくりと目が開いて、微笑んでるような、困っているような顔をしていた。

母は何かを口にした。
ありがとうだろうか
ごめんねだろうか

でも私と兄の声で何も聞こえなかった。

何かを言葉にしたあと、またゆっくりと目が閉じて、柔らかい表情をしたまま、息を引きっとった